2012/10/27

鳥は、羽根を閉じて飛ぶ。


昨日、天気が良かったので
昼飯を食べながら大隈庭園で本を読んでいた。
ふと空を見上げたら、スズメよりも一回り大きな、
町中ではあまり見かけない鳥が飛んでいた。
その鳥を眺めているときに、
人生で何度も見てきたはずなのに、
はじめての発見をした。
鳥が、羽を閉じて飛んでいる。

もちろん、ずっと閉じていたわけじゃない。
それじゃ飛べないし。
でも、その鳥は羽を大きく開いたかと思うと、
一瞬にしてそれをしまい込み、
羽を収めたまま滑空していた。
0.5秒ほど、すーっと、
文字通り空中を滑るように前進しながら、
すこし高度を下げる。
その後で羽ばたくことで、
前に進みながら高度をもとに戻す。

鳥のことをよく知っている人には
当たり前のことなのかもしれない。
でも、「鳥は羽を開いて飛ぶものだ」
と思い込んでいたので、
28年あまりの人生においてずっと、
鳥が羽を閉じて飛ぶことに気がついたことがなかった。
滑空してる瞬間は、
鳥にとってもそうなのかもしれないけれど、
見ている方にも気持ちいいものだった。
僕は、鳥が空を駆けまわるのを、
飽きることなく眺めていた。

ここから、
教訓めいた話をしようかと思ったのだけれど、やめた。
そういう話をこじつけるのは、よくない。

ただ、思うのはさ、世界って、
ほんとうに不思議にあふれているよね。
常識に縛られていた僕は
「鳥は羽を開いて飛ぶ」と思っていたけれど、
そうじゃないと知った時に、
世界の見え方はすこし変わった。
僕はこれから鳥を見るたびに
「羽を閉じている瞬間」が目に入るようになるのだろう。
それは、僕にとっては、ささやかだけれど、
けっこう嬉しいことだ。

そんなふうに世界の見え方が変わる経験を、
僕はこの10年ほど重ねてきました。
そうやって、自分自身をひたすら更新し続けてきたと思う。
毎年、毎月、毎日、毎時、毎分、毎秒、積み重ねてきた。

それによって、同じ「世界」だけれど、
10年前に見ていたものとはだいぶ違って見える。
絶望に押しつぶされそうだった僕の世界は、
今では、鳥が空を駆けまわるような
自由に満たされた世界に変わった。

この先、この世界は僕にとって、
どんな風に変わっていくのだろう。
そんなふうに考えてワクワクした、ある日の午後でした。